東京芸術劇場・テルアビブ市立カメリ・シアター国際共同制作
トロイアの女たち
30年前「王女メディア」で世界に躍り出たニナガワが、
今 世界に問う「女たちのギリシャ悲劇」!
戦争に敗れたトロイアに残された女たち・・・
悲惨な運命を 受け入れる女、抗う女、切り開く女・・・
それぞれの生き方をユダヤ、アラブ、日本、3つの文化圏の個性派俳優がそれぞれの母語で激しく演じ抜く
公演の詳細はコチラ
下記の方々より、コメントをいただきました!
ストーリー
永きにわたった戦争ののち、有名な「トロイの木馬」の奇襲作戦によりギリシャ軍の手に落ち殲滅されたトロイアの都。男たちはみな死に、残された女たちは奴隷としてギリシャに引き立てられていく。女王ヘカベが焦土と化した母国で絶望にみもだえる中、生き残った娘たちも悲惨な末路をたどる。カッサンドラはギリシャの将軍アガメムノンに見初められ聖なる巫女から愛人への転落を宣告される。ヘカベの息子で雄々しく戦死した勇将ヘクトルの嫁のアンドロマケは、まだ赤子の息子をもぎ取られ城壁からたたき落とされるのを目の前になすすべもない。一方その美しさがトロイアの王子パリスを迷わせ、二人のかけ落ちが全ての争いのもとになったスパルタの絶世の美女ヘレネは、元夫であるスパルタ王メネラオスの前に引き立てられると、すべて自分のせいではないと平然と弁明。ヘカベはメネラオスに、ヘレネを殺すようつめよるが、その色香に手を下すことができぬメネラオスは、ヘレネを生きたまま祖国へ連れ帰る。王妃として栄華を極めたヘカベ自身も、あわれ将軍の奴隷となる運命。ギリシャ行きの船が次々と出ていく。アンドロマケの残した願いを聞き、無残に殺された孫の死装束を飾るヘカベの背後でトロイアが炎上する。
解説
物語は戦争と情熱の神話集に基づいており、長い征服と大虐殺、捕虜虐待、特に当時の女性や子供への虐待に対するエウリピデスの考えを映し出している。『トロイアの女たち』でエウリピデスは英雄の地位を求めて挑戦をし、戦いに敗れた征服者の悲劇と権力の境界線についての物語を創り出した。エウリピデスは暴力性と知性によるぶつかりあいを検証すると同時にその限界を見せている。この点において、『トロイアの女たち』は過激で革新的な芝居というだけでなく、何よりもこの時代に書かれた最も人間的な芝居なのである。それは相反する複雑な感情で普遍的に人間の琴線に触れる。『トロイアの女たち』は屈辱をうけた祖国に対する愛と憎しみの間で揺れ動きながら国外追放者として宿命的な人生を送る。アンドロマケは新しい夫に心を開くべきか、それとも亡き夫に対して誠実であり続けるべきか分からなかった。カッサンドラはアガメムノンの閨の奴隷となることを望む気持ちと、拒む気持ちが同居し、ギリシャの伝令使タルテュビオスはやむにやまれず命令を遂行し、『トロイアの女たち』を哀れみ苦しむのである。
ドクター・ヴァルダ・フィッシュ、ドラマターグ