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東京芸術劇場シアターオペラvol.10 全国共同制作プロジェクト

プッチーニ/歌劇『蝶々夫人』 《新演出》全幕・日本語字幕付原語上演

笈田ヨシ演出、プッチーニ「蝶々夫人」、金沢歌劇座で幕開け!

舞台写真1
舞台写真2

2017年1月22日 金沢歌劇座

キミは蝶々さん、僕はピンカートン
切実でリアルな「蝶々夫人」の誕生

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

 1月22日、雪の降る金沢で全国共同制作プロジェクト『蝶々夫人』の初演を観た(金沢歌劇座)。ヨーロッパを拠点に活躍する笈田ヨシが、日本で初めてオペラを演出する注目の舞台である。題名役は中嶋彰子、ピンカートンにロレンツォ・デカーロ、シャープレスにピーター・サヴィッジ、スズキに鳥木弥生。指揮はミヒャエル・バルケが務めた。ピットに入ったのは地元オーケストラ・アンサンブル金沢(2月18日と19日に行われる東京公演では読売日本交響楽団が演奏する。指揮は全公演とも共通)。
 今回の『蝶々夫人』を一言でいえば、「真実味のある舞台」。登場人物たちが奥行きを持ったキャラクターとして描かれ、蝶々さんやピンカートンが、わたしであったかもしれないしあなたであるかもしれないと思わされる。こういった体験はこのオペラではまれなことだ。
 『蝶々夫人』は日本を舞台としたオペラであるがゆえに、「これは本物の日本らしい/これは日本ではない」といった議論に留まりやすいが、なぜこの舞台が日本であるかといえば、それは豊かな国の男と貧しい国の女の間にある一方的な関係から起きる悲劇を描くため。どの時代のどの国にも起きうる普遍的なテーマが題材となっている。
 たとえば、蝶々さん。蝶々さんは純粋な愛を捧げる無垢な存在とみなされるが、この舞台を観れば、ピンカートンが蝶々さんを欲するように、蝶々さんにもまたピンカートンに気に入られたい切実な事情があることに気づかされる。第1幕、花嫁となる蝶々さんはどんなふうにピンカートンを迎え入れるか。そしてどう自身の神を捨てるのか。一方、第2幕で姿を見せる蝶々さんは、ただ愛らしく無垢な女子ではなくなっている。「ある晴れた日に」と歌いながらも、この蝶々さんは自分の身に起きたことを正しく理解しているように見える。蝶々さんは失敗した女なのだ。敗北を認められずにピンカートンの帰還を信じていると歌う「痛い女」の姿が浮かんでくる。
 アメリカ人で軍人であるピンカートンと、日本人で元芸者の蝶々さんの間には、富める者と貧しい者という力学が働いている。蝶々夫人側から見ればこれは日本人のオペラだが、ピンカートン側から見ればこれはアメリカ人のオペラ。ピンカートンは名作オペラの登場人物のなかでもしばしば邪悪度ナンバーワンに挙げられる嫌われ役だが、台詞の上でも音楽の上でも、彼は悪いというよりは単に弱い男である。もっといえばごく普通の身勝手な男だ。いつだって自由に契約を破棄できる日本式の結婚。ラッキー、男にとって都合よすぎて最高だね! しかしアメリカでの妻ケイトとともに蝶々さんを訪れるときのピンカートンときたら。男なら(たぶん)だれもが共感可能なダメ男であるピンカートンと、目の前の問題にまっすぐに向き合うしっかり者のアメリカ人妻ケイトの対比も実にリアルだ。
 このオペラで鮮やかなのは、東洋と西洋の違いよりも、富める者と貧しい者、強い者と弱い者といった対比である。
 指揮のミヒャエル・バルケは雄弁にオーケストラを鳴らした。感傷に溺れない、きびきびと運ばれる音楽が、プッチーニの色彩的で新鮮なオーケストレーションの魅力をたっぷりと伝えてくれる。これは20世紀音楽の幕開けを告げるオペラでもあったのだ。オーケストラにとってのクライマックスともいえる、子役の登場前の緊迫感は見事。
 なお、時代設定は昭和初期に置き換えられている。演出上の奇抜な「読み替え」があるわけではないが、幕切れに残された余白は味わい深い。『蝶々夫人』って、こんなにもおもしろくて、説得力のあるオペラだったんだ。そんな再発見があった。

演出:笈田ヨシ メッセージ

蝶々夫人:小川里美・中嶋彰子 メッセージ

指揮者:ミヒャエル・バルケ メッセージ

Hello, I am very happy to be returning to Japan after my first experience, going there and just felt enough the country and the people, with the two orchestras that I met in Tokyo and Kanazawa. I am very happy to meet two more orchestra even, and to go on tour with wonderful staff, wonderful singers, for wonderful opera, Madame Butterfly. So see you in Japan !

こんにちは。 このたび、また日本で公演を行うことになりとても嬉しいです。
初めて来日した前回は、日本を非常に満喫できました。
素晴らしい人達と出会い、そして東京と金沢の2つの素晴らしいオーケストラとツアーを行いました。
今回はさらに2つ(東京、金沢に加え、大阪、高崎)のオーケストラとツアーを行い、優秀なスタッフ、素晴らしい歌手たちと共にこの傑作オペラ『蝶々夫人』を演奏できることを楽しみにしております。
日本でお会いしましょう!

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