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東京芸術劇場 海外オーケストラシリーズ

ソヒエフ&パリ管弦楽団

音楽評論家・柴田克彦氏による公演紹介文

フランスの看板パリ管と、同国トゥールーズの老舗楽団を躍進させたソヒエフ……これは待望の顔合わせだ。

パリ管は、最高級の技量、艶美で色彩的なサウンド、洒脱で洗練されたセンスを誇る唯一無二の存在。しかも近年は、P.ヤルヴィ、ハーディングと続いた辣腕シェフの明晰なリードによって、緻密な彫琢や精妙なダイナミズムを兼ね備えたスーパー楽団に進化している。

ソヒエフは、2008年31歳で音楽監督に就任したトゥールーズ・キャピトル国立管に活力を注入し、パリ管、パリ・オペラ座管と並ぶフランス・トップ3の評価を導いた。しかもボリショイ劇場等の音楽監督を兼務し、ベルリン・フィルやN響等への客演でも実績を重ねるなど充実一途。明解な構築、劇的な振幅や色彩感に充ちた音楽で強豪楽団の支持を得ている彼が、パリ管にいかなる化学反応をもたらすか? 興味は尽きない。

本公演の主軸はプロコフィエフのバレエ音楽『ロメオとジュリエット』。当コンビの初共演は2019年9月とごく最近(それでいて本ツアーを託された点がソヒエフへの期待値を物語る)だが、ソヒエフはその際にもプロコフィエフ(交響曲第5番)を取り上げている。彼はベルリン・ドイツ響とのCDシリーズで快演を続けるなど同作曲家が大の十八番。『ロメオとジュリエット』は、昨夏のベルリン・フィルのヴァルトビューネ・コンサートで大喝采を博してもいる。ゆえに今回は、パリ管の特質も相まった極彩色のドラマが期待される。

ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番も楽しみな演目。ソロを弾くルーカス・ゲニーシャスは、ロシアン・ピアニズムの伝統を受け継ぐ名手で、ショパン・コンクール2位が証明するように繊細さを併せ持つ。その個性が生きるラフマニノフの傑作では、微細な音符のニュアンスとロシア流の迫力を共生させた名演を聴かせてくれるに違いない。それにもちろん芳醇なバックとの絡みも要注目だ。

この色鮮やかな夕べに、ぜひとも足を運びたい。

柴田克彦(音楽評論家)

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