ユネスコ傘下のNGOである国際演劇協会(ITI=International Theatre Institute)では、演劇を通じて平和の構築を目指す取り組みとして、世界各地で「紛争地域の演劇」と題するプロジェクトが行われています。
日本センターではこれに呼応し、『国際演劇年鑑』(Theatre Yearbook)の調査・研究事業の一環として、2009年から「紛争地域から生まれた演劇」シリーズを実施しています。これまで9年にわたり、日本に知られていない優れた戯曲を発見・翻訳し、レクチャーやシンポジウム、リーディングという手法で、さまざまな国や地域の20作品を紹介してきました。
今回は、シリア出身で現在オランダに活動拠点を置くアドナーン・アルアウダ氏の戯曲『ハイル・ターイハ(さすらう馬)』と、ヨルダン/パレスチナのアイデンティティを持ち、現在UAE(アラブ首長国連邦)のシャルジャに活動の拠点を置くガンナーム・ガンナーム氏の戯曲『朝のライラック(ダーイシュ時代の死について)』の2作品を、リーディング公演とトークによりご紹介します。
◆『ハイル・ターイハ(さすらう馬)』
作:アドナーン・アルアウダ(Adnan Alaoda/シリア)
翻訳:中山豊子
演出:坂田ゆかり
出演:松山愛佳(文学座)、稲継美保、林周一(風煉ダンス)
歌:白崎映美(東北6県ろ~るショー!!)
作編曲・演奏:大平 清
<作品概要>
娘の名はハイル(馬)、母の名はターイハ(さすらい)。ベドウィン族とクルドの間に生まれたハイルが因習と現代的生活のはざまで揺れながら成長し、女性として自立する姿を、音楽や詩をふんだんに用いて描く語り物。多様性の中に「シリア」のアイデンティティを探る作家の真骨頂。クルド語交じりのアラビア語で書かれ、2008年出版。2015年にはパレスチナのイエス・シアターによりアラブ演劇祭で初演され、カースィミー賞を受賞した。
◆『朝のライラック(ダーイシュ時代の死について)』(世界初演)
作:ガンナーム・ガンナーム(ヨルダン/パレスチナ)
翻訳:渡辺真帆
演出:眞鍋卓嗣(劇団俳優座)
出演:占部房子、竪山隼太(さいたまネクスト・シアター)、内田健司(さいたまネクスト・シアター)、須藤沙耶(Pカンパニー)、髙山春夫(プロダクション・エース)、石川修平(劇団俳優座)
演出助手:中村圭吾(劇団俳優座)
<作品概要>
舞台はダーイシュ(※)の支配下にある架空の田舎町、テル・カマフ(「麦の丘」の意)。この町に住む夫婦、ドゥハー(「朝」の意)とライラックは芸術を若者に教えているが、学校は軍事拠点に、教え子たちは戦闘員となり、やがて死がふたりを引き裂く日がやってくる……。未来の子どもたちの幸せな日々を祈って書かれた、時空を往還する愛の物語。2016年に書かれ、ヨルダン文化省創造賞を受賞した本作は、今回のリーディング公演が世界初演となる。
※ダーイシュ(Da’ish)とは…「イスラーム国」を名乗る組織の他称。「イラク・シャームのイスラーム国(al-Dawla l-Islamiya fi l-Iraq wa sh-Sham)」のアラビア語の頭文字をとった、否定的な響きを持つ蔑称。同組織を支持しないアラブ人やアラビア語メディアは「イスラーム国」ではなく、「ダーイシュ」という呼称を用いることが多い。
- 日程
- 2017年12月14日 (木) ~12月17日 (日)
- ステージ数
- 4
- 会場
- アトリエウエスト
- プロフィール
-
- アドナーン・アルアウダ Adnan Alaoda (シリア)
-
作家、テレビ・映画の脚本家、劇作家、詩人。Al Rewaqコーディネーター。1975年シリア北部出身、ロッテルダム在住。ダマスカス高等演劇芸術学院でパフォーミング・アーツ、ダマスカス大学でジャーナリズムを学ぶ。2011年3月、作家やアーティストらによるダマスカスのデモに参加して捕らえられ、アサド政権支持を表明するように要請されたため、国を出て、ICORN(国際難民都市ネットワーク)に申請。ロッテルダム市よりレジデントとして招かれ、現在Velhalenhuis Belvédèreを拠点に創作活動を続けている。戯曲作品『ハイル・ターイハ』は2015年に開催された第7回アラブ演劇フェスティバル(※)で「カースィミー賞」受賞。
※アラブ演劇フェスティバル・・・アラブ演劇協会(ATI)主催によるアラブ最大の演劇祭。「新しく、更新し続けるアラブ演劇を目指して」を旗印に2009年から毎年開催されている。開催国(都市)は毎年異なり、これまでカイロ、チュニス、ベイルート、アンマン、ドーハ、シャルジャ、ラバト、クウェート、アルジェで行われた。2018年は1月10日から16日までチュニスで開催予定。運営はATIと開催国の演劇団体(官民)が連携して行う。フェスティバルでは、公募(*)で選ばれた作品の上演が行われ、優秀作品にはATIの理事長シェイフ・スルターン・ビン・ムハンマド・カースィミー殿下(シャルジャ首長)の名前を冠した「カースィミー賞」が贈られる(2011年~)。
(*)公募の条件には「過去一年以内に制作された作品であること」「アラブ人の重要な関心事を反映していること」「作・演出・出演・スタッフがアラブ諸国出身であること」「テキストの言語が正則アラビア語であることが望ましい」「書下ろしのテキストであることが望ましい」などがある。
- ガンナーム・ガンナーム Ghannam Ghannam (ヨルダン/パレスチナ)
-
演出家、劇作家、俳優。1955年ジェリコ生まれ。1984年から演劇活動を開始。ヨルダン芸術家連盟会員、ヨルダン演劇人協会会員。アラブ演劇協会(※)等の設立に参加。現在はアラブ演劇協会で出版・広報責任者を務めるほか、アラブ圏の多数の演劇祭で審査員を務める。代表作に故ガッサーン・カナファーニー原作の一人芝居『ハイファに戻って』。戯曲『朝のライラック(ダーイシュ時代の死について)』(2016)でのヨルダン文化省創造賞のほか、戯曲賞、演出賞を多数受賞。最新作はモノドラマ『私は異郷で死ぬ』(2017、作・演出・出演)。
日程
ステージ数
会場
プロフィール
- アドナーン・アルアウダ Adnan Alaoda (シリア)
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作家、テレビ・映画の脚本家、劇作家、詩人。Al Rewaqコーディネーター。1975年シリア北部出身、ロッテルダム在住。ダマスカス高等演劇芸術学院でパフォーミング・アーツ、ダマスカス大学でジャーナリズムを学ぶ。2011年3月、作家やアーティストらによるダマスカスのデモに参加して捕らえられ、アサド政権支持を表明するように要請されたため、国を出て、ICORN(国際難民都市ネットワーク)に申請。ロッテルダム市よりレジデントとして招かれ、現在Velhalenhuis Belvédèreを拠点に創作活動を続けている。戯曲作品『ハイル・ターイハ』は2015年に開催された第7回アラブ演劇フェスティバル(※)で「カースィミー賞」受賞。
※アラブ演劇フェスティバル・・・アラブ演劇協会(ATI)主催によるアラブ最大の演劇祭。「新しく、更新し続けるアラブ演劇を目指して」を旗印に2009年から毎年開催されている。開催国(都市)は毎年異なり、これまでカイロ、チュニス、ベイルート、アンマン、ドーハ、シャルジャ、ラバト、クウェート、アルジェで行われた。2018年は1月10日から16日までチュニスで開催予定。運営はATIと開催国の演劇団体(官民)が連携して行う。フェスティバルでは、公募(*)で選ばれた作品の上演が行われ、優秀作品にはATIの理事長シェイフ・スルターン・ビン・ムハンマド・カースィミー殿下(シャルジャ首長)の名前を冠した「カースィミー賞」が贈られる(2011年~)。
(*)公募の条件には「過去一年以内に制作された作品であること」「アラブ人の重要な関心事を反映していること」「作・演出・出演・スタッフがアラブ諸国出身であること」「テキストの言語が正則アラビア語であることが望ましい」「書下ろしのテキストであることが望ましい」などがある。
- ガンナーム・ガンナーム Ghannam Ghannam (ヨルダン/パレスチナ)
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演出家、劇作家、俳優。1955年ジェリコ生まれ。1984年から演劇活動を開始。ヨルダン芸術家連盟会員、ヨルダン演劇人協会会員。アラブ演劇協会(※)等の設立に参加。現在はアラブ演劇協会で出版・広報責任者を務めるほか、アラブ圏の多数の演劇祭で審査員を務める。代表作に故ガッサーン・カナファーニー原作の一人芝居『ハイファに戻って』。戯曲『朝のライラック(ダーイシュ時代の死について)』(2016)でのヨルダン文化省創造賞のほか、戯曲賞、演出賞を多数受賞。最新作はモノドラマ『私は異郷で死ぬ』(2017、作・演出・出演)。
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主催:文化庁・公益社団法人国際演劇協会日本センター
共催:東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)
企画制作:公益社団法人国際演劇協会日本センター
文化庁委託事業「平成29年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」
国際演劇年鑑2018(2018年3月発行予定)特集企画